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CTP(強制保険)と任意保険の違い─日本の自賠責・任意保険との違いについて【オーストラリア】

ご相談内容

オーストラリアで車を持つことになりましたが、保険の仕組みがよくわかりません。日本の自賠責や任意保険のようなものはあるのでしょうか?何に入っておけば安心ですか?

オーストラリアの自動車保険は、カタカナと略語だらけで難しく見えます。でも、最初に良いお知らせです。基本の構造は、日本の「自賠責+任意保険」の二階建てとよく似ています。日本で車に乗っていた方なら、その知識がかなりそのまま使えます。

ただし、「似ているからこそ気づきにくいズレ」がいくつかあり、そこを知らないと事故のときに痛い目に遭います。この記事では、次のことがわかります。

  • CTP(強制保険)の仕組み——日本の自賠責との共通点
  • 3段階から選ぶ任意保険——日本の任意保険との違い
  • 日本の感覚のままだと危ない、3つの注意点
目次

結論:仕組みは日本の「二階建て」とほぼ同じ

まず全体像です。オーストラリアの自動車保険は、「全員に義務づけられた強制保険」+「自分で選んで入る任意保険」の二階建てでできています。日本と並べると、こうなります。

日本の自賠責・任意保険とオーストラリアのCTP・任意保険の対応関係を示す図
図:JACS
スクロールできます
日本オーストラリア
1階:強制自賠責保険CTP(NSWでは「グリーンスリップ」)
カバー範囲他人のケガ・死亡(対人)のみ他人のケガ・死亡(対人)のみ
物損(車・モノ)対象外対象外
2階:任意任意保険(対人・対物・車両などのパッケージ)任意の自動車保険(3段階から選ぶ)

「強制保険は人のケガだけ。モノは任意保険」。この大原則は日豪共通です。ここが分かれば、あとは各階の中身と、日本との細かな違いを見ていくだけです。

1階:CTP(強制保険)とは——豪州版「自賠責」

CTP(Compulsory Third Party insurance)は、その名のとおり加入が義務の強制保険です。CTPなしでは車の登録(rego)ができず、無登録で走れば違法になります。NSWでは「グリーンスリップ(Green Slip)」という愛称で呼ばれます(昔の証書が緑色だった名残です)。

カバーするのは、事故で他人にケガをさせたり死亡させたりした場合の賠償(対人賠償)です。相手の治療費、休業補償、重傷の場合の介護費用などが対象で、「他人」には相手の車の運転手だけでなく、自分の車の同乗者、歩行者、自転車、バイクの人も含まれます。

重要

CTPは、車やモノの損害を一切カバーしません。相手の車の修理代も、自分の車の修理代も、壊したフェンスも、自己負担です。日本の自賠責が対物を一切カバーしないのと同じ構造です。「保険に入っているのに車を直してもらえない」という誤解の多くは、ここから生まれます。

日本の自賠責と違う点も、いくつか押さえておきましょう。

  • 買い方が州で違う:VIC・WA・TAS・NTでは登録料(rego)に込みで、自動的に付いてきます。一方、NSW・QLD・SA・ACTでは認可された保険会社の中から自分で選んで購入します(NSWでは登録前にグリーンスリップの購入が必要)。保険会社を選べる州では、価格比較で節約できる余地があります
  • 過失があった運転者自身の補償は州で違う:事故を起こした本人のケガがどこまで補償されるかは、州の制度によって扱いが大きく異なります。手厚い州もあれば、限定的な州もあります
  • 車に付いて移転する:CTPは人ではなく車に紐づいていて、名義変更(transfer)とともに新しい所有者へ自動的に引き継がれます

2階:任意保険は「3段階」から選ぶ

物損をカバーするのが、2階部分の任意保険です。ここに日豪の大きな違いがあります。日本の任意保険は対人・対物・人身傷害・車両保険を組み合わせたパッケージ型が主流ですが、オーストラリアではカバー範囲の広さで3段階に分かれた商品から選ぶのが基本です。

オーストラリアの任意自動車保険の3段階のカバー範囲を示す図
図:JACS
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種類相手の車・モノ自分の車(火災・盗難)自分の車(事故の損傷)
① Third Party Property(対物賠償)××
② Third Party Fire & Theft×
③ Comprehensive(車両保険付き)

日本の感覚に引きつけると、①は「対物賠償だけの保険」、③は「対物+車両保険フルカバー」に近いイメージです。上の段ほど保険料は高くなります。また、日本の「免責金額」にあたるものは「excess(エクセス)」と呼ばれ、保険を使うとき自己負担する金額のことです。excessを高く設定すると保険料が下がる、という関係も日本と同じです。

日本の感覚のままだと危ない、3つの注意点

構造は似ているからこそ、次の3つのズレに気づきにくいのです。

① 「登録(rego)してある=保険は大丈夫」ではない

多くの州でCTPがregoに込みなので、「登録料を払っている=保険に入っている」と感じてしまいます。それは半分だけ正解です。付いてくるのは対人のみのCTP。物損は1ドルもカバーされません。任意保険に入っていなければ、相手の高級車にぶつけた瞬間、修理代は全額自己負担になります。

② 「相手の保険で直してもらえるはず」が通じないことがある

日本では任意保険への加入が事実上の常識で、事故相手が対物無保険というケースはまれです。しかしオーストラリアでは、任意保険なし(CTPのみ)で走っている車が日本より珍しくありません。もらい事故なのに、相手が無保険で資力もなく、自分の車の修理代を回収できない——この「日本ではまず起きないパターン」が現実に起こります。だからこそ、自分がComprehensiveに入っておくことが、相手を選べない事故への最大の防御になります。

③ 自分のケガの扱いは州の制度しだい

日本では任意保険の人身傷害保険で「自分と同乗者のケガ」を過失に関係なくカバーするのが一般的です。オーストラリアでは、自分のケガはまず州のCTP制度の枠組みで扱われ、過失がある場合にどこまで補償されるかは州によって大きく異なります。任意保険の中には運転者向けの上乗せ補償を用意しているものもあるので、契約時にPDS(商品開示文書)で確認しましょう。

結局、何に入っておけばいい?

どの保険が最適かは車の価値や使い方、ご予算によるので一概には言えませんが、考え方の目安はお伝えできます。

  • 最低ラインは「① Third Party Property」:自分の車が古く価値が低くても、相手の物損は青天井のリスクです。高級車や店舗に突っ込めば、賠償は車の価値と関係なく膨らみます。対物だけは確保しておくのが定石です
  • 車の価値が高い・ローンが残っている・車がないと生活できないなら「③ Comprehensive」:自分の車の修理・全損に備えられる唯一の段階です。無保険の相手からのもらい事故にも、自分の保険で対応できます
  • 契約前にPDSでexcessと除外事由を確認:「若い運転者の追加excess」「申告していない改造」など、いざという時の落とし穴はPDSに書いてあります
JACSについて

JACSは保険会社ではなく、特定の保険商品を販売・推奨する立場にもありません。だからこそ、中立の立場で「仕組みの理解」と「トラブル時の対応」をお手伝いできます。保険選びそのものは、PDSを確認のうえ、必要に応じて保険の専門家にご相談ください。

よくある質問

CTPはどうやって入るのですか?

州によって2パターンあります。VIC・WA・TAS・NTでは登録料(rego)に含まれていて、登録すれば自動的に付いてきます。NSW・QLD・SA・ACTでは、認可保険会社の中から自分で選んで購入します(NSWは登録前にグリーンスリップの購入が必要)。保険会社を選べる州では、州の比較サイトなどで価格を見比べられます。

Comprehensive(車両保険付き)に入れば、CTPは要らないのでは?

いいえ、別物です。Comprehensiveは任意保険で、CTP(対人の強制保険)を含みません。CTPは車の登録に必須なので、Comprehensiveに入っていても、CTPなしでは登録も走行もできません。両方が揃ってはじめて「人もモノも」カバーされます。

事故で自分がケガをしたら、誰の保険に請求するのですか?

原則として、過失のある側の車のCTPが、被害を受けた人のケガを補償します。相手に過失があるなら相手側のCTP、という考え方です。自分に過失がある場合の自分のケガは、州の制度によって扱いが異なります。もし請求を断られたり過失割合に納得できない場合は、別記事「保険会社に補償を拒否された」をご覧ください。

まとめ:自賠責の知識に「3つのズレ」を足せばOK

  • CTPは豪州版・自賠責。対人のみで、車やモノの損害はゼロ。regoとセットで車に付帯する
  • 物損は任意保険で。対物のみ/+火災盗難/Comprehensive の3段階から選ぶ
  • 日本との本当の違いは制度より「無保険の相手が珍しくない」こと。Comprehensiveが最大の自衛になる

保険は「事故が起きてから」では選び直せません。仕組みを理解した今が、ご自身のカバー内容を見直すいちばんのタイミングです。

「保険会社に何と言えばいいかわからない」——その段階からで大丈夫です。届いたメールや書類をそのままお見せください。一緒に読み解いて、返す言葉を組み立てましょう。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的助言ではありません。制度や法律は州により異なり、変更されることがあります。個別の状況については、JACSまたは各州の消費者保護当局・専門家にご相談ください。

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